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「スポーツ産業論」講座の開設


「スポーツ産業講座設置への期待」

「スポーツ産業講座テキストつくり」
プロジェクト研究(2)第1回合同研究会シンポジウム
 1997.2.10〜11  湘南国際村   

本報告では、T.一橋大学大学における「スポーツ産業論」講座設立過程とその期待度、及びU.わが国の「スポーツ産業論」への歴史的・社会的期待とその方法について述べる。
T.本学における期待
産業文化部門(商学部大講座)スポーツ産業論講座設置の経緯・意義と期待
1.講座設置の経過と意義
(1)一般教育改組に伴う学部へのインテグレーション:
☆1991年7月「大学設置基準」の「大綱化」を受け、大学改革(主として一般教育改革)を加速。
以前から検討されてきた「インテグレーション」方式と「新学部構想」の中、前者を選択。「各学部改組」構想を展開。
☆1996年度より保健体育科目教官8名中、商学部:産業文化大講座(2名)と社会学部:スポーツ社会学大講座(6名)に分散・所属。
【1994年 商学部内構想】
@当初商品・技術部門に語学、理科エリアが混在する「産業技術論」として位置づけられた。
Aそこで、我々は、スポーツの科学技術的側面ではなく、スポーツ文化と産業の関わりを問題にする講座となることを希望・提案。
そのためスポーツ産業に関する実態、将来展望について先行研究・資料を紹介。
またすでに私立大学では「スポーツ産業論」を開設しているところもあり、今後この分野の社会的要求も広がることを説明。
(2)スポーツ産業論講座開設
【1995年商学部改組計画】
@講座新設計画の趣旨:「商学教育・研究の対象である企業の経営諸活動や企業を取り巻く経済社会環境は、近年急激に変化してきている。
・・・企業活動の担い手でもありまた顧客でもある個人のニーズの多様化により、文化的な活動への産業の需要や、
健康やスポーツへの産業の発展も起きてきている。」こうした状況をふまえ、「人文科学などとの融合・・・の観点から
経営文化のあり方や新しい産業のあり方を考える・・・ために、・・・産業文化大講座を商学科に新設する」
A新設教育科目の内容:「スポーツや文化活動などの多様な人間の活動が幅広く産業として発展していくプロセスを人間の本質に立ち返って分析する」ために
「スポーツ産業論」は、「なぜ、スポーツが社会の中で単に体を動かして健康を維持するという部分を大きくこえた文化活動になってきたのか、
そうした文化的活動がさらになぜ産業化されてくるのか」を考えていく。
また「そうした疑問に答えるような教育は、産業の中でのスポーツの意義を考える上でも、またどのような「活動」がそもそも産業として成立してくるのか、
という『産業原理』を考える上でも、重要なテーマである。」
B期待される効果:「文化や社会といった人文社会的な知識に立脚して、それらを中心に新しい産業が生まれてくる原理を考えさせる。
社会全体が脱工業化社会へ向かい、工業ではない新しいタイプの産業が社会の発展の大きな部分となっていることを考えると、
新しい時代の商学部学生がこうした産業化の新しい原理を考えることの意義は大きい。」

2.「スポーツ産業論」への期待:授業に見る学生の反応・期待
@学生の期待度:学生の受講者が非常に多い
スポーツ産業論講義(4単位;ゼメスター):263名(1学年1100名)
ゼミ生17名(当初唐木ゼミ9名、早川ゼミ9名、唐木教授の逝去により唐木ゼミ生を受け入れた)
A講義概要(別紙)
B学生の「スポーツ産業論」への関心・要望(「スポーツ産業論は必要か」調査から)
★「スポーツ産業論」の必要性
 ☆「スポーツ産業論」として:スポーツが投資の対象・商売として成り立つ経済行為であり、消費者及び企業行動を追求する必要がある。
 ☆直接的「産業論」志向:スポーツ論よりも企業戦略論、スポーツマーケティング論、ケーススタディーの重視を。
 ☆スポーツと産業のバランス論・抑止論:スポーツから産業を見るという視点がこれまでにはない。
このままでは産業にスポーツが引きずられる可能性が高い。
★学生の関心(グループ研究最終提出レポートから)
 ☆主たる関心ジャンル:プロスポーツ経営19、スポーツメディア7,スポーツマーケティング4、スポーツ産業化問題3
 ☆問題把握の例示
@オリンピックにおける「商業主義」に関して:
JOCと日本コカコーラ株式社への聞き取り調査分析から、この問題は、「オリンピック委員会の商業化」の結果で、企業側の「資金力」に屈するのではなく、IOCがオリンピックを維持(国際法人がオリンピックの意義を堅持しビックイベントと)していくために、企業への援助を求めていると結論。コカコーラの場合、企業名が前面に出過ぎたことはあるが、オリンピック大会運営に大きな貢献を成した、という認識。
Aプロスポーツ産業の企業分析:
プロレス産業のケーススタディー。ゴッフマンの「フレーム分析」から、プロレスは、「喧嘩」(本気)から「転形」(ルール化)した格闘技がさらに「偽造」(八百長)されたものであるが、これが総合的な格闘技として演出されることで観客を満足させる立派な「プロスポーツ」であるとし、その上で、プロレス業界の経営戦略に向けた「業界分析」「マイケル・E・ポーターの「FiveForces Analysis」をもちいて
「プロレス」の収益構造、競争戦略などを分析し、さらに「みちのくプロレス」をケーススタディーした。
ここには他のプロスポーツの「興行」モデルとなるであろう説得的な結論が導き出されている。
Bスポーツを「する」側と「見る」側を結ぶメディア分析:
今日では「するスポーツ」と「見るスポーツ」の「享受スタイルのバランス」が求められる。「見るスポーツ」が「するスポーツ」に従属するのではなく、「独自で固有のスポーツ享受」が必要である。そのためには「する」と「みる」が「共有的心理」すなわち、「する」側は「見る」側と楽しむ心理を、「見る」側は「する」側に「高いモチベーションを求める心理」を意識することである。この両者の心理を結びつける役割を「メディア」が担うべきで、最近のスポーツ報道に見られるメディア側の一方的な「エンターテイメント化」に走ることを戒めるべきであると結論づけている。

U.わが国における社会的な要請と今後の課題
1.「スポーツ産業論」への過程概観
@1970年代まで:スポーツ>スポーツ産業(産業はスポーツに従属関係)
・スポーツ施設、用具を中心としたスポーツ産業
A1990年代まで:スポーツ<スポーツ産業(スポーツは産業に従属関係?)
・スポーツ施設、用具等に加えてメディア・イベント・情報などの拡大
・マスメディア・企業によるプロ化志向
・アトランタオリンピック大会(1984)
・Jリーグ設立(1993)
2.スポーツ=スポーツ産業(スポーツと産業は対等平等関係)を求めて
@社団法人スポーツ産業団体連合会設立(1988)
A通商産業省「スポーツ産業研究会」発足(1989)
B日本スポーツ産業学会設立(1990)
C「スポーツ産業・マーケティング」講座設置 ・順天堂大学「スポーツマーケティング」(1994)
・京都教育大学
・鹿屋体育大学
・立命館大学
・龍谷大学
・一橋大学商学部「スポーツ産業論」(1996)
D研究活動・成果
・『スポーツビジョン21』通商産業省政策局編、(財)通商産業調査会(1990)
・『スポーツ産業学研究』1巻〜 スポーツ産業学会(1991)
・『スポーツビズ』アティーブン・アリス著/河田芳子訳、ダイヤモンド社(1992)
・『スポーツマーケティング』広瀬一郎、電通(1994)
・『スポーツ産業論入門』原田宗彦編、杏林書院(1995)
・『スポーツ産業論』松田義幸大修館書店(1995)
・『スポーツマネジメント』ボニー・L・パークハウス/日本スポーツ産業学会(1995)
3.スポーツ産業論発展の方法論を求めて
@「スポーツ産業」研究の促進
上記研究成果に見られるように「スポーツ産業」の発展・促進研究は着実に進みつつある。
この方法論は大枠において産業(構造)からの視点に立って成されている。
A「スポーツ産業論」研究を豊かにするために
しかし、上記研究には、「スポーツ論」からの、あるいは「スポーツ論」へ向かうベクトルが不十分であるように思われる。
そこで「スポーツ」へのベクトルを常に意識する方法として「スポーツ論」に基づく「スポーツ産業(論)」の分類・構造化が必要となる。


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